どうして道路を渡るの?

ようこそ、いらっしゃいませ!

こちらでは、EAのTHE SIMS 3での擬似日常をだらだらと綴っています。

*改めてごあいさつ*

長きにわたり、放置していてすみませんでした。

いつかは戻ってくる、と決めていたので、
移転や閉鎖もせず、けどいつの間にか2年半も経っていました。

やっと戻ってこれましたので、イチから出直します。

「君がいた世界」は、未完のまま終了です。
また、別館は閲覧できない状態にしています。

本当に、長い間留守にして、申し訳ありませんでした。

お気に入りリンクの整理、やっとしました。
リンク切れサイト様もいくつかあって、
2年半と言うのは長かったな・・・と改めて実感しています。

~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~

主役ふたり、やっと揃いました。

Calico Capriccioso
第2話 新しい出会いとか再会とか

最終更新日 2015.04.03

水曜日, 10月 29, 2014

プロローグ Side_R③

「あー・・・一ノ瀬くん。」
「あ。教授。」

秋も深まったある日、授業が終わった後、アールは担当の教授に呼び止められた。

「君、まだ就職決まってないのかい?」
「はぁ・・・。」
「内定も出てないのか?」
「ええ。まだ・・・なんですよ。」

「この時期になって内定も出ていないのは君くらいだよ?本腰入れてかからないと、卒業までに決まらないぞ?院にでも行くつもりかい?」
「いえ。就職します。」

改めて教授に言われてみて、アールは焦った。
今までも焦っていなかったわけではないが、本気で職を探そうとしていたか、と言われれば、そうではないような気がした。

「教授・・・どこか、ないですか?」
「うーん・・・君は成績は悪くないし・・・希望は?専門職?」

「出来れば専門を活かした仕事に就きたいです。」
「今の時期からではちょっと難しいけどなぁ。助手になって大学に残るという手もあるが・・・。」

大学助手も悪くはない。
どうしても仕事が決まらなければ、それも選択肢の一つだ。
だが、大学の助手から講師、助教授、教授、と上り詰めていくには時間がかかり過ぎる。
しぃが卒業する2年後には、安定した収入を得ていたいのだ。

「ま、心当たりを当たってはおくが。」
「心当たりがあるんですか?」
「あまり期待しないでくれよ。君の意向に添えるか分からないから。」

「バイトはほどほどにな。」
「はい。」

自分ではどうしても仕事を探せない。
そんな時に教授から声をかけられたのは僥倖というしかない。
教授の持ってくる話なら、悪い話ではないだろう。


「・・・というわけでさ、就職決まるかも。」
「またそうやって人任せにして・・・。」

「やー。これで安心してバイトに励めるわー。」
「そんなこと言って、決まらなかったらどうするんです。」
「それはその時考えるさ。」

さっき教授に言われて焦りを感じたことなど、アールはすっかり忘れていた。

「あっという間に卒業の時期になりますよ?」
「教授の紹介なんだから、大丈夫だって。」
「気に入らない職業だったらどうするんです。」

「だから、教授の紹介なんだから、まともな職だって。この際、選り好みなんかしてらんないし。」
「選り好みしないのなら、もっと早く内定出てもよさそうなもんですが・・・。」
「そういう怜ちゃんはどうなの?決めたの?」
「考え中なんです。」
「そんなに選択肢、あるの?」

「地元の会社にするか、都会のほうにするか・・・。」
「地元って?実家の近く?」
「まぁ、すぐによその土地に配属になると思いますが。」
「俺は実家からは離れたいなぁ。っていうか、大学の近くか、都会のほうがいいな。」
「・・・選り好みしてるじゃないですか・・・。」

「よぉ、お前ら。」

アールと怜が、チェスに興じていると、四郎がやってきた。

「チェックメイトです。」
「あー・・・。」
「アール、お前、チェス下手だな・・・。」

「くっそ!何だよ四郎ー。じゃ、怜ちゃんとやってみろって!」
「四郎くん、院試だったんじゃないですか?
「おぅ、受かったぜ。」

「そうですか!おめでとうございます!」
「四郎は院に行くのかぁ・・・。」
「ま、大学に残らないと、実家継がされるからな。」
「継ぐ家があるだけ羨ましいってもんだ。」

「何を言う。教会だぞ。」
「・・・悪魔教会か?」
「・・・だったらこんなに悩まん。」
「俺なら継ぐけどなぁ。信者多いんだろ?安定してるじゃん。」
「アール。貴様、俺に邪神に魂を売れと言うのか。」

四郎の実家は教会だった。
その反動で、中二病に染まったのだ、と四郎は言う。

「ああ!じゃ、やっぱ行く末が決まってないのは俺だけか!」
「なんでもいいだろう。お前ならどこに行っても如才なくやれるだろうし。」
「そうですよ。アールくん。自分でもちゃんと探したほうがいいですよ。」

探していないわけではない。

学生会館に寄っては、求人を見てみたり


「えーっと・・・。」

「なんだ?これ・・・。現場作業員?給料はいいけど・・・。」

「体、もたないよなぁ・・・。一生の仕事には出来ないし・・・。」

バイト先のマスターに尋ねてみたり

「ちーっす。」

「あー。お腹すいた。マスター。まかない出してよ。」
「OK。座んな。」

「ねぇ、マスター。」
「うん?」
「いい仕事、ないかなぁ。」

「私が紹介できるのは水商売だけだって。何度も言ってるじゃないか。」
「水商売ねー・・・。」
「新卒が就職するようなとこじゃないよ。」

「アール、お前、高望みし過ぎなんじゃないか?」
「そんなことないと思うんだよね。」
「妥当なところで手を打たないと、就職浪人なんてことになりかねないよ?」
「それは困る。」

「ま、ここでずっとバイトしててくれてもいいけどね。君、よく働いてくれるし。」
「うーん・・・。」

如才ない、人当たりがいい、よく働く・・・周りはそう言ってくれるけど、それならなぜ、仕事が見つからないのだろう?

「ま、教授に期待して、ダメだったらここで働きながら探してもいいかな。」

それも選択肢の一つ。

その考えが甘いのだ、ということに、周りからいくら言われてもアールは気付かないフリをしていた。
いざとなれば、いくつか選択肢がある。
そのことも、アールがのんびり構えている原因だった。

しぃを今、喜ばせることと、しぃを将来幸せにすることの狭間の位置にいて、どうしても、今のしぃの笑顔を優先させてしまうのはそのせいだ。

「・・・それにしても・・・今夜はなんだかヒマだな・・・。」

普段ならぽつぽつとお客さんが来る時間になっても、店はがらんとしている。

「怜ちゃんでも呼ぶかな。話し相手欲しいし。」

こうもヒマだと、やることがすぐになくなってしまう。

「・・・さすがにまだ寝てないよな。」

怜なら、アールが困っていればいつも手を貸してくれる。
そんな怜に、アールはいつも甘えている。

「あれ?出ないかな・・・。」

長いコールの後、やっと怜が電話に出てくれた。

「あ。怜ちゃん?俺。今何してんの?」

「あのさー。今から店に遊びに来ない?今夜、ヒマでさー。1杯だけならおごるから。」

「なに言ってるんですか。イヤですよ。この寒いのに。」

普段なら、しょうがないですね・・・などと言って出てきてくれる怜が、今日はやけにはっきりと断ってきた。

「寒いから、あったまりに来ればいいじゃん!」

「雪降ってるからイヤです。ボクは寒いのは苦手なんです。」

「雪?」

怜にそう言われて、アールは外に出てみた。

「あ・・・。」

どおりでお客さんが来ないわけだ。
冷えるとは思っていたが、外は銀世界になりかけている。

「珍しいな・・・。」

自分の実家のある街では雪は降らないし、ここでも滅多にお目にかかることはなかった。
こんな雪を見るのは、いつ以来だろう?


そう。
子供の頃、ほんの少し過ごしたあの街・・・。
おばあちゃんと、小さな女の子がいた。
忘れるとはなしに忘れていた子供の頃の記憶。
胸の奥に大事にしまっていた宝箱のふたが、かすかな音を立てて、そっと開くような気がした。




~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~




その頃、怜ちゃんは・・・

「わわっ!」
 「た・・・助けてー!!」

UFOに連れ去られていましたw

・・・時間かかってすみません・・・。
たいした話でもないのに・・・。

日曜日, 10月 12, 2014

プロローグ Side_R②

「怜ちゃーん。」

「あれ?バイトじゃなかったんですか?」
「試験前だから早上がり。」
「なかなか殊勝な心がけですね。」

「そりゃ俺だって、本業は学生なわけだから。卒業できないと困るしね。」
「そう思うならバイトやめたらどうですか?仕送りはあるんでしょ?」

「んんー・・・もうちょっと稼がないと・・・。女の子の靴って高いのな。」
「またしぃさんですか。いったいいくら貢いでるんですか。」
「貢いでるなんて人聞き悪いなぁ。俺が好きで買ってあげてるんだし。」

「バイトの時給、もうちょっと上がんないかなぁ。」
「ムリならムリってしぃさんに言ったらどうです?」
「そんなこと言ったら、しぃちゃん、がっかりしちゃうじゃないか。女の子失望させるのはよくないよ。」
「ボクならそんな女の子は願い下げですが。」

アール自身は、しぃのような可愛い彼女がいることが自慢だったが、周りの誰も、アールのことを羨んでなどいなかった。
むしろ、アールの貢ぎっぷりを見て、彼女に声をかけなくてよかった、と安堵さえしていたのだ。

「それよりさ、怜ちゃん。」
「なんでしょう?」
「試験範囲ってどこ?」

「今頃なにを言ってるんですか!ここからここまでですよ!」
「えー・・・。」

「範囲多いよ・・・。怜ちゃん、一緒に勉強しよ?」
「今までさんざん一緒に勉強しよう、って誘ったのに、断ったのはアールくんです。」

「そこをなんとかさぁー・・・。」
「ま、いいでしょう。ボクも復習になりますから。」

「うー・・・覚えらんねえ・・・。カンペ作ろっかなぁ。」
「いけません!そんなことする時間あったら、勉強したほうがマシです!」
「それもそっかぁ。」

この調子でアールは4年間・・・いや、ハイスクール時代も含めると8年間、怜に頼って、勉強を乗り切ってきたのだ。

「んー・・・このくらいにしときますか。」
「怜ちゃん、サンキュー。怜ちゃん、教えるのうまいよなぁ。」
「誰のせいでうまくなったと思ってるんですか。」

怜に勉強を教えて貰って、試験ではちゃっかりと、怜と同じくらいの点数を取ってしまう。
もともと頭の出来はいいのだが、普段時間がないのを理由に勉強しようという努力をしていないから、怜に頼ることになってしまうのだ。

「さ。寝よ。しっかり睡眠とらないと、頭の回転が鈍くなるし。」
「言われなくても寝ますよ。」

「怜ちゃん、おやすみー。」

怜は、釈然としないものを感じながらも、いつもアールのペースに巻き込まれてしまうのだった。
けれど、それもあと数ヶ月でおしまい。
そう考えると、怜は少し寂しさを感じる。

一人になって、アールはちゃんとやっていけるのか・・・。


それが心配でならなかった。


だが、さすがのアールも、就職だけは自分でなんとかしなければいけない。
こればっかりは、怜を頼るわけにはいかなかった。

「・・・うん。うん。・・・ちゃんと探してるって。」

「・・・いやいや。そんなのいいって。自分でなんとかするからさぁ。」

「だから、ちゃんと考えてるってば。」

このところ、しょっちゅう実家から電話がかかってくる。
それもこれも、アールがなかなか就職を決めないので、両親が心配しているのだ。

「これでも考えてるつもり・・・なんだけど・・・。」

父親はジャーナリストで、顔が広い。
だから知り合いに就職の口を当たってくれたり、母親が働く美術館で、とりあえずアルバイトから始めてはどうか、と言ってきたりと、電話のたびにあれこれと話を持ってくる。

「でもなぁ・・・。」

アールの希望は公務員。
・・・いや、公務員でなくとも、一生安心して働ける、安定した仕事に就きたかった。
出来れば、昇進も早くて、ボーナスもきちんと出るところがいい。
それもこれも、しぃのためだった。

しぃは、悪い子ではない。


しぃの父親は、この大学の教授である。
その一人娘であるしぃは、甘やかされて育てられ、だから、お嬢様育ちで世間知らず、ちょっと甘ったれなところがあるだけだ。

「んー・・・分かんない・・・。」

親から叱られたこともなく、欲しいモノはなんでも手に入った。

「ふぁ・・・眠た・・・。」

父親が教授だから、そして、生まれた時からずっとこの大学を目にして育ってきたから、というそれだけの理由で、なんとなく大学に入った。
ただ、今までそこそこにしか勉強してきていなかったため、大学に入って途端に授業についていけなくなった。

「もー・・・寝ちゃおう。勉強は・・・アールくんが教えてくれるからいいや。」

今まで、親にあれこれねだっていたのが、アールという恋人が出来て、ねだる相手が変わっただけだ。
勉強は楽しくなかったが、アールと一緒にいられるのは楽しい。
しぃにとってアールは、自分の願い事を叶えてくれる、魔法使いのような存在だったのだ。


「いらっしゃい・・・なんだ。怜ちゃん。四郎も。」
「よっ。」

「試験が終わった途端バイトですか。」
「稼がないとねー。」

アールは試験期間中を除き、ほぼ毎晩、このカフェでバーテンとして働いていた。
あれこれとバイトをしてみたが、やはり夜の仕事が、一番実入りがいいのだ。

「なんか飲む?」
「お腹空いたので、なにか食べたいです。」

「ほい。」
「試験はどうでした?アールくん。」
「ま、ぼちぼちかなぁ。」

「まったく・・・やれば出来るのに、なんで普段からやらないんですか。」
「忙しいし。」

「いっそのこと、ここに就職したらどうですか?」
「それは勘弁。やっぱ日勤の仕事じゃないと。」

「アールくんの作るカクテルは美味しいですけどね。」
「そりゃ、毎晩作ってるしさ。けど、この程度の腕じゃ、バーテンダーとして稼ぐには全然足りないよ。」

「それにさー・・・夜の仕事じゃ、しぃちゃんと時間が合わなくなっちゃうだろ?」
「けど、しぃさんはまだ学生だから、日中も時間があるのでは?」
「しぃちゃんが卒業した後の話だよ。」

「まさか・・・結婚するつもりですか!?」
「そうだけど?」

「俺がちゃーんと稼いでさ、しぃちゃんには家にいて貰いたいわけ。掃除して、布団干して、ご飯作ってさ。おかえりー・・・なんて言ってもらいたいんだよ。そんで子供たくさん作ってさ。」

「・・・本気ですか・・・。」
「うん。だから、就職決まったらプロポーズしようと思って。」

「はぁ・・・そこまで・・・。」
「あ。四郎もなんか飲む?」
「ふむ。地獄の業火のようなヤツを作ってくれ。」

「よっしゃ!任せとけ!」

アールは本気だった。
そこそこの成績でもいいからきちんと大学を出て、いいところに就職して、しぃが大学を出たら結婚して、幸せな家庭を作って、子供が出来て・・・そんな生活設計が、アールの中には出来上がっている。

「そのためには、まず就職だけど・・・。」

アールは、自分自身の生活設計の、まず第一歩すら踏み出していない。

「・・・あ。メール。」

「しぃちゃんだ。」

「課題、手伝って~・・・か。」

「かーわいいなぁ。もう。」

しぃからあれこれ誘いがあると、自分のことは二の次になる。
アールにとって、一番大事なのはしぃがニコニコと笑っていてくれることで、そのためなら、自分の時間も、お金も、なにもかもしぃに捧げるつもりだった。


「アールくーん。課題、手伝ってもらいにきちゃった。」
「いらっしゃい。しぃちゃん。」

「もー全然分かんなくって。しぃ、お手上げなの。でも今週中に提出しないと、単位貰えないかもだし・・・。」
「ちゃんと手伝うよ。今日中に仕上げようか。」

「1日でやっちゃうの?結構たくさんあるんだけど・・・。」
「大丈夫!任せとけって。」

しぃは、アールとは学部が違う。
アールには専門外なのだが、しぃのためなら、専門外の勉強をすることは、苦ではない。

「上、行こうか。談話室も食堂も、人がいるからなぁ・・・。」
「アールくんのお部屋は?」
「怜がいるよ。」

本当は、しぃの家まで行って、勉強を教えればゆっくりできるのだが、アールはまだ、家の中まで上げてもらったことはない。
行っても、いつも玄関先までで、しぃが出てきて、外に行きたい、と言うのだ。

「ここなら静かでいいだろ。」

それに、アールがしぃに会いに行きたい、と思うより先に、必ずしぃの方から寮にやってくる。
それだけ好かれているのだ、とアールは解釈している。

「課題、どれ?」
「あのね。ここから。要点をまとめて、方法をいくつか考えなさい、って。」
「OK。どこが分からないの?」

「んー・・・要点がどこなのかが分かんない。」
「そっかぁ・・・。」

これはいつものことだ。
だからアールは事前に、しぃのカリキュラムを把握して、勉強していたのだ。
そんなことをしているから、自分の勉強も、就職活動すら時間が制限されてしまうのだが、幸い、しぃはまだ2年生。
専門分野、といっても、さほど突っ込んだ内容ではないため、アールにも十分理解出来るのだ。

「じゃ、まとめるところからやろうか。」
「うーん。」

テキストを広げ、概要を確認して、しぃに説明するのだが、しぃは難しい顔をするばかりだ。

「アールくん、すごーい。しぃ全然分かんないよ。まとめて?」
「んー・・・じゃ、俺がまとめまでやるから、その後は一緒に考えようか。」
「んふ。頑張って考えるね。」

とは言ったものの・・・。

しぃに甘いアールは、結局すべてやってしまうことになる。
しぃはそれを清書して提出するだけ。
それでも、しぃがある程度は理解してくれている、とアールは信じていた。
利用しているとか利用されているとか、そういった感覚は二人にはない。
しぃがアールを頼って、アールはしぃの期待に応える。それが愛だと思っていたのだ。




~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~



アール編ですが・・・話の内容をまったく考えていなかったため、時間かかってます(^-^;)
早く就職を決めて欲しいモノです。