どうして道路を渡るの?

ようこそ、いらっしゃいませ!

こちらでは、EAのTHE SIMS 3での擬似日常をだらだらと綴っています。

*改めてごあいさつ*

長きにわたり、放置していてすみませんでした。

いつかは戻ってくる、と決めていたので、
移転や閉鎖もせず、けどいつの間にか2年半も経っていました。

やっと戻ってこれましたので、イチから出直します。

「君がいた世界」は、未完のまま終了です。
また、別館は閲覧できない状態にしています。

本当に、長い間留守にして、申し訳ありませんでした。

お気に入りリンクの整理、やっとしました。
リンク切れサイト様もいくつかあって、
2年半と言うのは長かったな・・・と改めて実感しています。

~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~

主役ふたり、やっと揃いました。

Calico Capriccioso
第2話 新しい出会いとか再会とか

最終更新日 2015.04.03

木曜日, 3月 17, 2011

枳殻の花を手折るように

※上にも書いていますが、しばらく本当に本当に暗い話しが続きます。
なので、気分が落ち込んでいる方や、体調の悪い方には、閲覧をお勧め出来ません。
しばらく、記事を隠してアップしますので、元気になったら見てね!





翌朝・・・。
「橘花。」

「橘花。」

「橘花、こっち向いて。」
「・・・左京・・・。」

彫刻を削るのに没頭していて、左京がすぐ背後にくるまで気がつかなかった。
「・・・橘花、頼む。こっち向いて。」

顔の傷は、腫れは少し治まっていたが、昨日よりもずきずきと痛む。
化粧をしてごまかそうか、と思っていたのに、朝から彫刻台に向かっていて、忘れていた。
「・・・左京・・・。」

それでも、意を決して振り向くと、左京の真剣な眼差しに射すくめられた。
「・・・橘花・・・その傷・・・本当に・・・どうしたの?」

「え・・・昨日、言ったじゃない。自転車で・・・。」

「・・・そんなウソ、俺が信じるとでも思ってるのか?」
「・・・。」

「まさか・・・誰か・・・よその男に乱暴されたとか・・・。」
「え・・・。」

昨夜は、橘花の心の傷を思うとあまり深く聞いてはいけないのではないかと思い、問い詰めなかったが、それを考えると、左京は落ち着かず、もしそうなら・・・しかるべき手段を取らなければいけない、と考えたのだ。
「え・・・あ・・・違うよ!そんなんじゃないって!」
「・・・ホントか・・・?」
「ホントだってば!そんなんじゃない!」

そう言って、橘花は視線を逸らした。
『・・・だったら・・・なんだ・・・?』

これもまた、ウソかもしれない。
気丈にしているが、口に出せないほどのひどい目に合い、本当は言いようのないくらい傷ついているのかもしれない。
『・・・こんな時・・・なんて言ってやったらいいのか・・・。』

左京には分からない。
ただ・・・本当に、自分には絶対に知られたくないことなのだろう、というのは分かった。
「・・・橘花・・・。」

橘花を傷つけるヤツは、絶対に許せない。
なのに、自分はこうやって抱き締めてやることしか出来ないのがもどかしい。
「・・・橘花・・・頼む。病院、行って?」
「・・・たいしたことないってば・・・。」
「・・・頼むから・・・。」

また罪が重なっていく・・・。
なのに橘花は、左京の手を振りほどくことが出来ない。
「左京・・・。」

左京の腕の中で泣きたかった。
本当のことを言って、縋りたかった。
「・・・分かった・・・。行ってくる・・・。」

けれども、それをしないことが、罪の償い。
このくらいで帳消しになるような罪ではないけれど・・・。

左京に背を向け続けることでしか贖えない罪の意識は、次第に大きく橘花の心を支配していった。

「・・・どうして描けないんだ・・・。」

出来は悪くない・・・と思えるのだが、やはり納得がいく、とまではいかない。
「・・・こんなんじゃ・・・。ダメだ・・・。」

そろそろ見切りをつけたほうがいいのだろうか。
「・・・なんか・・・食べてこよう・・・。」

食欲は湧かないが、ギルの言った言葉が頭の片隅に残っている。
身体が欲しなくても、なにか胃に入れれば、少しは気が紛れるかもしれない。
そして、ゆっくり眠りたい。
「ダニエルさんに・・・睡眠薬貰おうかな・・・。・・・いや・・・やっぱやめた・・・。」

それは、最後の手段に取っておこう。
ぎりぎりまで追い詰められるまでは。

「橘花。ちゃんと病院、行ってきた?」
「うん。でも・・・本当にたいしたことないし・・・。」

診察をしてもらい、鎮痛剤は貰ってきた。
そのおかげで、痛みは引いている。
「あの・・・さ。話したくなかったらいいんだけど・・・それ・・・本当に、だれかに殴られたんじゃ・・・ないのか?」
「・・・違うって言ったじゃない。」

「誰かに襲われたり・・・本当にしてないな?」
「・・・うん。」

言いたくなければいい、と言ったものの、気になってしょうがない。
現に彼女は、暗く、沈んだ顔をしている。
そして、顔の傷のせいで、余計に痛々しく見えるのだ。
「あのさ・・・。」

しかし、バスルームから誰かが出てくる気配を感じ、左京はそこで言葉を切った。
「・・・言いたくなったら・・・俺、待ってるから・・・。」
「・・・ん。」

『お父さんと橘花さん・・・なに話してたんだろ・・・。二人とも深刻な顔して・・・。しかもあの傷・・・。』

それが、自分にとっていい話だとは、宗太には思えなかった。
視線を交差させている二人の顔・・・それが、言葉などなくても通じ合っているような・・・そんな風に見えて、不安を掻き立てられた。

「橘花・・・っと・・・どうした!その顔!?」
「あ・・・やっぱヒドイ?」

家の中で、他の誰かに顔を見られないように、と部屋にいる時間が多かったが、そればかりではさすがに気が滅入る。
気晴らしにゲームでもしようと思っていたのだったが、ギルに呼び止められてしまった。
「橘花・・・もしかして・・・。」
「・・・え?」

ギルも左京と同じようなことを言うのだろうか・・・。
「もしかしてそれ、こないだ、本屋の前で・・・。」
「え・・・?見てたの・・・?」
「俺が見たのは、お前が言い争ってたとこだけだ。あの二人組、友達じゃないな、とは思ってたけど・・・。誰だ?」

「・・・知らない人。」
「知らないヤツになんで絡まれるんだ?しかもそんなに・・・。」
「本当に・・・知らない人なの・・・。」

「だから、知らないヤツになんでそんなになるまで殴られるんだ?」
「・・・。」
「・・・左京か?」
「え・・・。」

「・・・当たりだな。左京のファンか。」
「ちが・・・。」
「アイツ、今、すっげぇ売れてるからな。そうじゃなくても元々人気のあるミュージシャンだ。この狭い街で・・・左京がここに住んでることを知ってるヤツは、たくさんいるからな。大方そのことで、嫌がらせされたんだろう?こんなことになるなら・・・見かけたとき、声かけりゃよかった・・・。」

「左京は知ってるのか?」
「・・・ギル、お願い。左京には言わないで・・・。」
「そいつは俺は、約束出来ない。」

「言わないでっ!」
「・・・ダメだ。左京は心配してるだろ?」
「・・・じゃ、しばらくの間でいいの。言わないで・・・。」
「・・・しばらく?」
「そう・・・しばらく・・・。」
「・・・分かったよ。」

しばらくというのはどういう意味だ?とギルは訝しんだが、橘花に何か考えがあるのだろう、と橘花の要求を飲んだ。

「橘花さん。」
「ん?」

街で絡まれてから、外出するのも億劫になった。
部屋で彫刻をするか、絵でも描くか・・・と思っていたところを、宗太に呼び止められた。
「なぁに?」
「その傷・・・どうしたの?」
「ああ・・・。自転車で転んじゃって・・・。」

「あ・・・なんだ。そうなんだ。」
「うん・・・。」
「危ないから気をつけてよ。」

こうやって、いちいち説明するのも面倒だ。
やはり、部屋にこもっていた方がよさそうだ。
けれど、宗太はなかなか解放してくれなかった。
「あのさー・・・。」
「ん?」
「ちょっと・・・ボクが作ってる彫刻、見てくれないかな?」

「え・・・ワタシが見なくっても、宗太くん、うまいじゃない!」
「そんなこと・・・ないよ・・・。」

「ちょっとだけでいいんだ。・・・ね?」
「・・・う・・・。」

「・・・分かった。ちょっとだけなら・・・。」

橘花は宗太に対して、負い目を感じている。
告白してくれたのに、それに応えてあげられない・・・なのに宗太は、それにもかかわらず、こうやって以前と同じように接してくれる・・・その気持ちが、宗太の部屋へと足を向かわせた。






あああ・・・。

2 件のコメント:

  1. この間の通りすがりの人2011年3月18日 10:25

    暗いお話、大歓迎ですう~~、それもどうかと?w

    さようですね、良いお話を書くには良い事ばかり書いていては
    お話に深みが出ません、かといって無理やり不幸にすることもないですが、

    きっかの自転車で転んじゃっててのはウソなんですが、
    それをきちんと見破ってくれる人がいいですよね、いいというか、
    宗太なんかはまだまだお子様で、きっかがウソをついたらあっさり認めて、
    後は自分のきっかへの気持ちでいっぱいいっぱいの人は子供っぽいです。

    でも宗太も皆も自分なりにきっかの事を心配はしてるんですけどね、
    きっか本人が他人の意識を汲み取れないぐらい余裕が無い時は、
    そこまで視野を広くして判断できないですよね。誰でもそうですよねえ。

    ダニエルの感が鋭くて助かりました。第二の唐沢クルーみたいですねw

    いやぁ~、きっかの心情を上手に描いておられます。見ていてワクワクします、
    他人の不幸を見てワクワクじゃないですが、どうするんだろう?と純粋に疑問を持ちますよ。
    うまいこと読者の「気になる」部分をかきたたせて頂いています。

    食い付いてる読者がここに一人w
    あ、そうだそれから、太ったモナリザの絵も気になりましたw

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  2. この間の通りすがりの人さん、おはようございます!!
    ま、確かに、無理に不幸にする必要もないんですが、このあたりのすれ違いというか、きちんと話し合わないことで生じてくる誤解というか、これがあるから、お互い、ますます深みに嵌っていって、余計に強くお互いを求めるというか。

    愛情の度合いの表現として、『すごく』とか『深く』というよりも、『強く』というのを描きたいのです。
    共に闘っていく、みたいな。

    宗太はホントにまだ子供じみていて、自分の気持ちばかり優先して、橘花のことを考えてあげられないんです。
    そこが左京との相違。
    橘花は、自分のことではなく、人のことばかり考えていて、それがまた、相違。

    あ、ダニエルじゃなくって、ギルですよねw
    もうね、ギルしかいないんですよぉ~。
    ダニエルじゃ、性格的に弱くって・・・。
    今後、ギル率が非常に高くなります。
    要のところで締める役割を、すべて彼にお任せします。

    うん。クルーみたいですよねっ!書いてて自分でも思ってました!
    左京&ギルと宗太&ダニエル、って感じです。
    ギル、こんなに性格よかったっけ?という感じですけどw
    まぁ、30歳くらいの設定なので、大人ですよね。
    しかも、結婚も決めちゃってて、男として円熟期♪

    で、左京にはギルがいるんですが、橘花には誰もいないのかっていうと、ロッタちゃんもいるんですが、相談役として、ある人を出します。
    ふふふふふ・・・あの人ですよ。あの人!
    大人で知的なあの女性を、登場させようと思ってます!

    デブ・モナリザ・・・やはり気になりましたか。ワタシもです(^-^;)ゝ
    橘花が遊びで描いたとでも思っといてください!

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