どうして道路を渡るの?

ようこそ、いらっしゃいませ!

こちらでは、EAのTHE SIMS 3での擬似日常をだらだらと綴っています。

*改めてごあいさつ*

長きにわたり、放置していてすみませんでした。

いつかは戻ってくる、と決めていたので、
移転や閉鎖もせず、けどいつの間にか2年半も経っていました。

やっと戻ってこれましたので、イチから出直します。

「君がいた世界」は、未完のまま終了です。
また、別館は閲覧できない状態にしています。

本当に、長い間留守にして、申し訳ありませんでした。

お気に入りリンクの整理、やっとしました。
リンク切れサイト様もいくつかあって、
2年半と言うのは長かったな・・・と改めて実感しています。

~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~

主役ふたり、やっと揃いました。

Calico Capriccioso
第2話 新しい出会いとか再会とか

最終更新日 2015.04.03

水曜日, 3月 16, 2011

デーメーテールの娘

「坊ちゃん、早速だが、指南を頼む。」
「あ・・・うん。」

ある日の早朝、武術の稽古をしようと庭に出た宗太に、ギルが近付き、武術指南を願い出てきた。
「・・・なんだその顔。まだ不眠症が治ってないのか?」
「ま・・・でも武術の稽古は出来るよ・・・。」

まだ眠れない日は続いている。
けれど、夜明け前に部屋の外をうろつくのはやめた。
「しかしお前、いい体格になってきたな。背も伸びたんじゃないか?」
「毎日やってるからね。」

「身体を動かすのはいいことだ。けど・・・疲れたらちゃんと休め。」
「うん・・・。」
「ま、ちょこっと教えてくれ。」

「じゃ、まず構えから・・・。」
「ふむ。」

と、宗太はギルに武術指南を始めたが、やはりギルは瞬く間に覚えてしまった。
「よ・・・っと。」

「なんだ・・・やっぱりギルさん、うまいじゃん・・・。」
「いや・・・こいつはなかなか難しいな。」

こうやって、身体を動かしていれば、そのほんのひと時だけ、思い詰めた気分が少し晴れる。
けれども、橘花のあの姿・・・ドレスを纏った妖精のような姿を思い起こすたび、抑え切れない衝動が湧き上がってくるのだった。


「特に欲しい本もないけど・・・。」

橘花は左京と顔を合わせまい、と逃げるように外出ばかりしていた。
この日も特に用もないのに、ふらり、と本屋に立ち寄ってみただけだった。
「・・・あ。パパの取材記事が載ってる雑誌、ないかな?」

海賊伝説を取材する、と圭介は言っていた。
記事になるにはまだ早いかもしれないが、とりあえず探してみよう、もしかすると他の記事が載っているかもしれないし、なければ何か、立ち読みでもしようか、と店内に入った。

「橘花ー。」

昼過ぎに起き出した左京は、橘花を探して部屋を訪ねたが、橘花の姿はなかった。
「いないのか・・・。出掛けたのかな・・・。」

早く話をしたい、と気が焦るばかりだったが、このところどうもすれ違うことが多い。
「・・・顔、見たかったのに・・・。」

それだけでもいい。
それだけでも、気持ちが和む。
なのに、最近、ちゃんと顔すら見られない日が続いている。
「・・・どこ行ったんだろ・・・。最近・・・よく出掛けてるな・・・。」

こんな気分のまま仕事に出ても、乗らないだけだ。
不貞寝でも決め込むか・・・と左京は自分の部屋に戻った。

「ねぇねぇ。左京の、ツイン・ブルックのラスト・ライブ、チケット取った?」

「あったり前じゃん!仕事休んで、朝から電話かけまくったよ!」
「1時間で完売だもんねー。」

「楽しみだね~。ツアーは?行くの?」
「あんまり遠くだと、ママが喧しいからさぁ・・・。」
「あんたんち、過保護ねぇ。ウチなんか放置だよ?・・・ま、お金ないから行けないけど。」


「・・・んー・・・やっぱり載ってなかったか・・・。」

「さて・・・どうしようかな・・・。日が落ちるまでまだちょっとあるし・・・。」

中であれこれと物色してみたが、興味を引くような本もなかった。
ぼんやりと立ち尽くしている橘花に、本屋の前で左京の話をしていた二人が目を止めた。

「・・・ね、アイツ、知ってる?」
「なに?」

「アイツ・・・左京と一緒に住んでんだよ。」
「げっ。なんで!?」

「なんかしんないけどさー。あたし近所だから時々見かけるんだよ。」
「カノジョ!?」
「まさか!あんな子が?他にも何人か一緒に住んでるみたいなんだけどさー。知らない?学校の裏のでっかい家。」

「ちょ・・・聞き捨てならないわねっ。」

「・・・やっちまいなよ。」
「あんた、金持ちのくせに血の気、多いねー。」

二人が橘花の側まで近付いてきた。

「ちょっとあんた。」
「・・・え?(誰・・・?)」

「あんた、なんて名前?」
「(・・・人に名前聞くときは、自分から名乗るのが礼儀じゃないの・・・?)・・・ワタシ・・・急ぐんで・・・。」

たかりかカツアゲか・・・なんにしろ、絡まれる謂れはない、と橘花はそこを立ち去ろうとした。
「待ちなさいよっ!」
「あ・・・ちょ・・・ちょっと・・・。」

「待て、って言ってるでしょ?」
「・・・なんなの・・・?」

「あんた、左京と一緒に住んでるんでしょ?いったいどんな手使って潜り込んだのよ。」
「え・・・。」

この二人組、左京のファンなのか・・・と思った。
「別にそんなんじゃ・・・。シェア・ハウスだし・・・。」
「左京と話ししたりするわけ?」
「そりゃあ・・・。」

「その家・・・部屋、空いてないの?私たちも左京と一緒に住みたいんだけど。」
「今、空き部屋ないから・・・。」
「あんた、家主に頼んでよ。」
「(・・・ワタシが家主なんだけど・・・)え・・・それはちょっと・・・。」

「だったらあんたが出て行きなさいよっ!!」
「え・・・なにそれっ!」

「だったらさー・・・あんた・・・左京のシャワーシーンとか盗撮してきなさいよ。寝起きの姿とかー。いい値で売れるわよ?」
「あ!それいい!」
「カメラなら貸すからさー。」
「え・・・。」

「そんなこと出来るわけないでしょっ!」
「なによ!コイツ・・・。あんたばっかりいい思いしてるくせにっ!」
「ま、左京がコイツみたいなの相手にするとは思えないけどね。」

「あんたたち、左京のファンなの!?本当のファンなら、そんなこと言うもんじゃないわよっ!」
「・・・生意気ね・・・コイツ・・・。」
『・・・あれ?橘花じゃないか・・・。友達?・・・にしては険悪そうな・・・。』

武術の稽古を終え、ジョギングをしている途中に通りかかったギルだったが、自分が割って入るほどではないだろう、とそのまま通り過ぎた。
後から思えば・・・この時、橘花に声をかけておけばよかった、と後悔することになったのだったが・・・。

「ま、あんたなんかどうせ左京に相手にもされないだろうけど、私たちの左京なんだから、気軽に話したりしないでよっ!!」
「分かってるわよ!けど・・・そんなこと言われる筋合い、ないわっ!!」
「この・・・。」

「調子に乗ってんじゃないわよっ!!」
「うっ・・・。」

「このっ!!」
「きゃっ!」

「ちょ、あたしにも殴らせてっ!」
「任せた。」
「え!な・・・なんでっ!?」

「なんでじゃないわよっ!左京と一緒に住んでるなんて・・・許せないっ!!」
「そ・・・そんなの・・・。」

自分のせいではない・・・。
しかし何を言っても、この人たちは受け入れないだろう。
「ワタシ・・・。」
「まだ口答えする気っ!?」

「この女っ!!こうしてやるっ!!」
「きゃ・・・。」

「い・・・痛いっ!!」
「はんっ!いい気味っ!!」

「痛いっ!やめてったらっ!!」
「誰がっ!!」

「・・・いた・・・。」
「ふんっ!ざまあみろっ!!」

「ちょっと可愛いからって、いい気になるんじゃないわよっ!!」
「・・・。」

こんないわれのない暴力を受けたのは、初めてだった。
「う・・・。」

「・・・ね・・・ちょ、野次馬、増えてきてない?」
「んー・・・残念だけど・・・ずらかるか・・・。」

「今日はこのくらいにしといてやるよ。今度見かけたら・・・もっとひどい目に合わせてやっから!」
「もう行こ?あーあ。せっかくいい気分だったのに、あんたのせいで台無しよ!」

『・・・いわれのない暴力?・・・違う。そうじゃない・・・。』

『ワタシだって立場が逆だったら・・・誰かが左京と一緒に暮らしてるなんて知ったら・・・悔しいと思う・・・。』

『・・・殴ったりはしないけど・・・。』

「・・・あなた・・・大丈夫?女の子なのに・・・ひどいことするわね・・・。」
「・・・ありがとう。大丈夫です・・・。」

↑この人・・・スケ三郎の奥さんです・・・
『・・・帰ろう・・・。』

きっとバチが当たったのだ。
左京に好きだと言われ、キスをされ、抱かれた・・・その罪に、神様が罰を下したのだ。

『誰にも見られないうちに・・・部屋に入って鍵、かけよう・・・。』

『誰もいませんように・・・。』

しかし・・・そんな時に限って、今、一番いて欲しくない人がいるものだ。
『・・・二階のバスルーム、行こう・・・。』

左京の目の前を、何食わぬ顔をして通り過ぎる勇気が、今は出ない。
そっと階段を上がろうとしたのだが、誰かが帰って来た気配に、左京が気付かないはずがない。
「あれ?橘花?」

↑ケータイ、鳴ってるぞ・・・
「なんで二階なんかに・・・?」

いつもなら、帰ってくればまず、真っ直ぐ自分の部屋に入るだろうと踏んで、橘花の部屋の前で時間を潰していたというのに、アテが外れた。
左京は橘花を追って、階段を上がった。
「橘花、出掛けてたの?どこ行ってたんだ?」
「うん・・・。本屋・・・。」

「なんか面白い本、あっ・・・え・・っ?」

回り込んで、橘花の顔を見て、左京は驚いた。
「え・・・どうした!?その顔っ!?」
「え・・・なんか・・・変?」

「傷だらけじゃないか!」
「え?」

確かに、痛いのは痛いが、自分の顔がどんな風になっているのか、橘花は知らなかった。
だが、左京がこれほど驚く、ということは、ひどい顔をしているのだろう。
「・・・えっとー・・・自転車で転んじゃって・・・。」

「こう・・・。」

「・・・どてっ!って・・・。」

「失敗しちゃった。へへっ。」
「・・・顔から?」
「え・・・?」
「顔から転んだのかよっ!」

「え・・・うん・・・。」
「(・・・ウソつけ・・・)ちょっと・・・よく見せて。」

「あ・・・ちょっと・・・。」
「・・・転んだ?転んだ傷じゃないじゃんか・・・これ・・・。」

「病院に行った方が・・・。」
「たいしたことないよ。」

「・・・離して。転んだ時身体打っちゃって・・・お風呂入って休みたい・・・。」

「橘花・・・。」
「ゴメン・・・。」


『・・・なんだ?あの傷・・・。』

『自転車で転んだなんて・・・ウソだ・・・。』

『何が・・・あったんだ・・・。』

あれは、殴られたような痕だった。
しかも、かなりひどくやられている。
なのに橘花は、自分にウソをつき、平然とした顔を装い、無理に笑ってさえ見せる。
喧嘩をするような子じゃない。たとえそうだとしても、殴り合いになるほど、嫌な出来事があったというのか。
自分に言えない何か・・・もしや・・・誰か他の男に襲われでもしたのか・・・。

「あー・・・ホントにひどいや・・・。」

こんな顔では、左京に見咎められるのも無理はない。
「あざ・・・残るかな・・・。」

何日経てば、この傷は癒えるだろう。
『けど・・・あの人たちの言い分は・・・きっと左京のファン、みんなの思いなんだろうな・・・。』

したたかに殴られたことには腹が立つ。
けれど、あの二人だって、きっと、自分が左京とプライベートで話しが出来る、ということに胸を傷めているのだろうな、と思った。
『・・・イヤだな・・・。もうここにはいたくない・・・。』

ギルとロッタには申し訳ないが、予定を早めよう。
『・・・左京・・・ゴメン・・・ワタシ・・・もう・・・。』

ここは冥府だ。
自分がこの場所を離れなければ、季節は巡らない。
大罪を犯した自分・・・もっと大きな罪を犯す前にここを離れなければ・・・。
『左京・・・。』

橘花は左京を思い、泣きながら眠りについた。
抱かれるのは夢の中だけでいい。
けれど・・・左京は夢の中には出て来てはくれなかった・・・。






ああ・・・。

2 件のコメント:

  1. この間の通りすがりの人2011年3月17日 9:35

    ヒイイィィ~~
    女の暴力怖いです。
    いまだかつて、ヒロインがこんなに殴られるなんてあったでしょうか。

    左京のフアンだからって殴りはしない。
    正真正銘いわれの無い暴力ですよお、だれかパパラッチとかが
    現場を撮ってないのかなぁ、ギルなにやってるんだよぉ~~(涙)

    きっかは今どんな心理状態におかれてるんでしょうね・・・
    私が悪いんだ!みたいな?
    スターの恋人として受け入れられない、ってことかな?
    きっかの傍に行ってもっとお喋りして話を聞いてあげたい!
    なんて思ってしまいました。まずは・・・

    フレンドリーな自己紹介→おもしろい話をする

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  2. この間の通りすがりの人さん、おはようございます!

    あ。ヒロインはやっぱり、殴られないものなのでしょうか。
    いちゃもんつけて、殴るまではしなくても、悔しい、殴ってやりたい、ってスターのファンならそう思いますよね。
    ギルは本当にたまたま通りかかっただけなんですよ。
    本当はずーっと遠くからこの光景を見ていて、女同士だし、割って入って余計こじれたらいけないな、なんて思ったんですよね。

    いわれのない暴力だ、と言って貰えてよかったです。
    ぜひ!橘花とお友達になってください!
    これからもっと、家の中で孤立していってしまって、追い詰められていくんです。
    きっと、通りすがりさんのような楽しいお友達がいたら、橘花も笑顔を見せてくれるんじゃないかなぁ。

    おもしろい話をする→おもしろい顔をする
    ・・・でお願いします!!

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